小さなAndroid端末であるJelly Proは、Elephone Qとくらべてかなりキビキビ動くため、テキスト入力も快適に行うことができます。
ならば、これでショートショートなどを書いてみようと思ったのが発端です。通常はノートPCや、Pomeraなどを使っているのですが、これらの難点は横から覗き見されること。
執筆中の内容を覗かれるのはやはり恥ずかしいわけですが、Jelly では覗かれる心配がありません。
特に私は老眼+近眼なので、顔の近くに端末を持っていくため、余計に覗かれにくいのです。
時間的には3時間ほどでしょうか?
文章量の割にはやはり時間がかかっていますが、それでもこの端末のサイズを考えれば良い方なのではないでしょうか?
とりあえず、どんな物が書けたのか……恥もなく公開したいと思います。
---------------------------------------------------------------------------------
駄文の内容はともかく、これくらいの文書量が簡単に打てるなんて、Jellry Proは素晴らしい端末だと思います。幽霊が夜に出るものなんて、誰が決めたんだ?奴らは時間も場所も関係ない。夜に目撃談が多いのは、人間の暗くて視覚が発揮できないからそれ以外の感覚……つまり霊感が鋭くなっているからというだけだ。通勤電車の朝の混雑時なのに、不思議に席が空いてるのを見たことがあるだろ?でも、誰も座らない。理由は見えてないだけで、ヤツが座っているからだ。見えなくても、本能的にいるのがわかってるんだ。だから、誰もそこに座ろうとしない。それが無意識の防衛本能なんだと思う。だけど、極希に防衛本能が働かない人ってのがいる。元から霊感がないのか、体調が悪くて感知出来なくなってるのか、または守護霊が強すぎて全く悪い霊の影響を受けないのか。それとも単純に運が悪いのか。結局どれだかわからないが、いま俺の前でその席に座った女がいる。歳は二十代後半の会社員風の女だ。顔色が良くないように見えるから、疲れて警戒心が働かないのかもしない。生命力が低下しているときに、連中と接触するのはかなりヤバい。あとはこの霊が無害な奴であることを祈るのみだ。俺は女が平気なのかじっと見る。元々その席にいた霊は、ジジイだった。その上に女が座り、最初はずれていた両者が徐々に重なっていく。(ああ、コレはヤバいヤツだ!)そう思ったけど、この満員の状態では逃げることは出来ない。左右を確認してみたが、どこにも移動するスペースは存在しない。(早く次の駅に!)駅にさえ着けばこの車両から逃げ出すことができる。(それまでなにも起きるなよ……)だがこんな望みはたいてい打ち砕かれるもんだ。ジジイの体と完全に重なると、具合悪そうだった女は突然しゃんと背を伸ばす。そして、血走った目をギョロリとさせて首を動かさずに周りを見渡す。それは獲物を探すようにみえて、俺はとっさに目を合わせないようによそ見をした。だが視界の端で奴が俺のことをじっと見ているのが分かる。俺は絶対に目を合わせないように必死だ。意識すればするほど、見てしまいそうになる。いっそ目を閉じてしまおうかとも思ったが、奴の行動を把握できなくなるのはもっと怖い。八方ふさがりの状況に、額に嫌な汗が噴き出してくるのが分かる。奴の視線は俺から外れない。「あの、どうしたんですか?」「え?」思わぬところから声がした。それは例の女から俺を挟んで逆隣のサラリーマンだった。この男は俺を越えて座席の女に声をかけている。「ずっとこの人を睨んでますけど、何かされたんですか?」「えぇ!?」思わず俺の声は裏がえる。よりにもよってこんな所で痴漢犯呼ばわりされるとは!男の言葉を聞いた周囲の客も、言葉の意味を理解したのか、ざわめき始める。(勘弁してくれ!)「俺は何もしていない。そもそも、ずっと両手が吊革にあるのは、隣のあんたがよく分かることだろう?」俺は努めて冷静にそう言った。「あんたには聞いてない。そっちの女性に聞いているんだ。それにそんなに汗をかいて、きっとやましいことがあるのに決まってる!」こういう決めつけ野郎は殴っても良いという法はないものか?「気分が悪くて冷や汗をかくと、罪になるのかよ! 言いがかりはやめてくれ!」「言いがかりかどうかは、彼女が決める!」「……なんだ、そのとんでも理論は?」男の言うことが突飛過ぎているのが幸いし、車内の客は俺に同情ムードになる。少なくとも痴漢逮捕に協力しようというより、関わらないようにしようという雰囲気だ。「いいから黙れ!」引き下がれなくなった男は逆ギレる。「さあ、この男が何かしたんでしょ? 言って下さい!」言葉を促されたせいで、危うく女を見てしまうところだった。俺はとっさに目を閉じる。「……るから……」女が何かを発する。あのギョロ目と似合わない可愛い声が聞こえた。それは彼女本来の声なのだろう。「ハッキリ言って下さい!」「その人、気づいてるから……」「え?」予想外の言葉に男は毒気を抜かれたらしい。「その人、気づいてるのに、こっちを見てくないの。わざとらしく目をそらして……ねえ、気づいてるでしょ? 見えてたんでしょ?」女の声がだんだんと大きくなる。「私はね、気づいて欲しかったんだ。やっと気づいてくれる人が居たと思ったのに、気づかない振りをするなんてね!」俺は目を合わせまいと、閉じ続ける。「でも!」そこで声のトーンが変わる。そして、俺を押しのける感触を感じる。目を閉じていたから、両手で吊革に掴まっていなければ、倒れていたかもしれない。「代わりにアナタでいいわ」思わず目を開けてしまった。ギョロ目の女が隣の勘違いサラリーマンのジャケットをしっかりと掴んでいる。「……う……ぁ……なんだ……何なんだよ、オマエ!」「ケケケケケっ! 捕まえたぁ!」「うわあぁぁぁ!!」満員電車の中に男の絶叫が響いた。ちょうどその時、電車は駅につき、ドアが開いた。ほとんどの乗客はこの乗り換え駅で降りる。男が絶叫しても、女の様子がおかしくても、みんなは勤務先に向かうことを優先し、見なかったことにして電車を降りていく。俺は本来まだ乗り換えないのだが、こんなところには一秒たりとも居たくない。他の客に続いて車外に出た。ギリギリだった。俺の背後でドアが閉まる。走り始めた電車の中を見ると、恐怖の顔でもつれ合う男女が見えたが、電車はダイヤ通りに走り去っていった。その後、あの二人がどうなったのか? 俺には知る方法はない。ただ、俺は相変わらず同じ電車で通勤しているが、あの二人の姿を見ることは、二度となかった。【終】---------------------------------------------------------------------------------
0 件のコメント:
コメントを投稿